開放弦のチューニング

violin

先ほど夜7時くらいからヴァイオリンを練習しようとしてケースから楽器を出し肩当てをつけようとしたとき、楽器を滑らせしまい、あわてて体全体を使うかのように楽器をつかんだところ、E線(一番高い音の弦)が切れてしまいました。

« Evah Pirazzi »(sterk)を使ってました。E線にしては結構高いほうなのですが、大きく輝かしい音が出るのとなんといっても長持ちするのがいい弦です。去年のリトルの演奏会前にかえたのであれからずいぶん経っているのですがちょっとショックでした。

ケースの中のスペアを見てみると、E線は »JARGER »(Medium)がひとつだけ残っていたので、さっそくつけかえようとすると…、

バチーン!

また切ってしまいました。もうスペアのE線はありません。今夜は練習ができない。しかも明日は朝9時から練習、、どなたかにE線をお借りするしかなさそうです。そしてお昼の移動を利用して渋谷でお借りした分も含めて買うしかなさそうです。

さてさて、僕がヴァイオリンを始めたのは今からちょうど6年前の1月でした。楽器は年末に買っていましたが、レッスンなどを始めたのは年明けの1月からでした。この楽器の難しさに悪戦苦闘しているのは相変わらずですが、それでもレッスンやオーケストラなどを通して、少しずつ周りの音を聞きながら演奏ができるようになってきたなど、それなりの進歩はしています。

ただ、最近、とっても情けないことに「開放弦のチューニング」が意外にきちんとできていないことに気がつきました。6年目で改めて気づくというのもどうなんでしょう。正直言うと去年くらいから何となく気が付いていて、そのためか少々チューニングに対して自信を失っており、家では必ず全部の弦をチューナーを使ってあわせていました。

DとGの音がどうしても低くなってしまうのです。

AとDを同時に引くと、Dが低めでもハモっていると認識してしまうようで、そのDを用いて今度はGを合わせようとすると、当然D自体が低いわけですからGも低くなってしまう。でも、この時点でGが低いことに気がつくわけですが、どう修正していいのかわからなくなってしまう、といった感じです。

ただ、今週あたりからなんとなくコツを見つけたような気がしています。

今までは、AとDを合わせるとき意識している音階がA-dur、つまり基音をAにしてハーモニーを認識していたわけですが、そうではなくD-dur、つまり基音をDにして考えるとどうやらDを今までよりも正しい位置にもってこれそうなのです。そしてこのDを使ってGを合わせるとき、今度はG-durを意識して合わせるとこれまたあいやすくなったように感じるのです。

ところでこのことに気がついたとき、ヴァイオリンのチューニングは当然自然なハーモニーである「純正律」で行うので、この基音を変えたチューニングの効果というのはきっと理論的にも意味があるのかもしれない、と思いました。

ということで、ちょっと検証してみました。

なお、検証に当たり、

http://www.moge.org/okabe/temp/scale/node16.html

のページを参考にさせてもらいました。

まず、今まで僕が行っていた方法でチューニングをした場合。

Aを442Hzとし、基音をA(ラ)にした純正律で、Aの音を利用してD(レ)の音を合わせると次のようになります。

A(ラ)…周波数 442Hz :周波数比 1

D(レ)…周波数 294.593Hz :周波数比 0.6665

今度は基音をD(レ)にした純正律で、Dの音を利用してG(ソ)の音を合わせると次のようになります。

D(レ)…周波数 294.593Hz :周波数比 1

G(ソ)…周波数 196.3462345Hz :周波数比 0.6665

E(ミ)の音は再び基音をA(ラ)にした純正律でとります。

A(ラ)…周波数 442Hz :周波数比 1

D(レ)…周波数 663Hz :周波数比 1.5

今度は、この間発見した新提案による方法。

Aを442Hzとし、基音をD(レ)にした純正律で、Aの音を利用してD(レ)の音を合わせると次のようになります。

A(ラ)…周波数 442Hz :周波数比 1.5

D(レ)…周波数 294.6666667Hz :周波数比 1

今度は基音をG(ソ)にした純正律で、Dの音を利用してG(ソ)の音を合わせると次のようになります。

D(レ)…周波数 294.6666667Hz :周波数比 1.5

G(ソ)…周波数 196.4444444Hz :周波数比 1

E(ミ)の音は再び基音をA(ラ)にした純正律でとります。これは従来と同じです。

A(ラ)…周波数 442Hz :周波数比 1

D(レ)…周波数 663Hz :周波数比 1.5

従来の方法と新しい方法を比べるとこうなりました。

「レ」

純正律チューニング(従):294.593Hz

純正律チューニング(新):294.6666667Hz

平均律(参考):294.6078Hz

「ソ」

純正律チューニング(従):196.3462345Hz

純正律チューニング(新):196.4444444Hz

平均律(参考):196.8886167Hz

確かに新手法のほうが高くなっているので「直観」は当たっていたようです。でも、小数点1ケタ程度の差を感じられるほどすぐれた耳の感覚を持っているのか疑問です。

ならば、この差を「セント」と呼ばれる単位に換算して考えてみることにしました。セントというのは半音の100分1を指します。つまりオクターブというのが1200セントとなるわけです。楽器をやっている人にとってセントというのは結構馴染みのある単位で、これまでの経験から自分は3セントから5セントの差を聞き取ることができることを知っています。セントは、周波数を用いて、

1200*(Log(周波数比))/Log2

で計算できます。ということで、従来の方法と新手法の結果の差をセントで表現すると

D(レ)の差:0.432862622セント

G(ソ)の差:0.865725245セント

…、、明らかに自分の感覚では聞き取れない差であることが判明しました。

ということで、長々と検証してきましたが、結局のところ、予想通りというべきなのか、、

「結論」

開放弦のチューニングはもっときちんと叩きなおしたほうが良い。

明日は午前、午後、夜とオケの練習が入っています。がんばります。

P.S

上で出てきたセントの式を用いて、とっても有名な純正律の「ミ」と平均率の「ミ」のセント差を求めてみると、「-13.68628614セント」となりました。確かにこれは十分聞き取れる差ですね。

いろいろと勉強になりました。

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